●サリーばかりを着ていた。夜のドレスアップ

初日も、二日目の夜も、サリーを着用。カクテルドレスも持ってきているのだが、ついサリー。

黒いドレスを着ている人が多いので、サリーは目立つ。「美しいサリーですね」と何度も褒められて、とても気分がいいのである。

わざわざ遠くから駆け寄ってきて

「Excuse, me! あなたのサリー、素敵ですね! その生地が本当にきれい! そのことだけを言いたかったの!」

と言って立ち去って行く若い女性もいた。ダンスの先生も、

「夕べのあなたのサリー、最高だったわ!」と、自己紹介の前から顔を覚えてくれていた。もう、こうなったら、毎晩サリーを着てしまわずにはいられないというものだ。

かつてはわたしがインド服を着用することを好まなかった夫だが、妻の衣服がほめられることに加え、「サリー」という言葉が人々の口から出るのがうれしいようである。

「みんな、サリーを知っているんだね」と、うれしそうに感心している。

彼がインド服を敬遠していた理由のひとつは、民族衣装には古くさいイメージがあったからのようだ。インドではともかく、海外では、主に「年輩の」インド人女性ばかりがサリーを着ていることもあり、だからわたしが着るのは「ださいこと」とすら思っていたようである。

しかし、2004年4月にインドでサリーを大量購入し、初めてホームステッドでのパーティーで着用したときに人々が褒めてくれたのを機に、彼も考えが変わったようである。率先して、サリーを着用を促すようになった。さらには、ホテル内で出会ったインド系の女性が欧米風のドレスを着用しているのを見て、

「彼女もインド人なら、サリーを着るべきだよね〜。自国の文化に誇りを持たなきゃね〜」

などと耳打ちする始末。大きなお世話である。

そんなことを言ったら、わたしは着物を着なければならないではないか。インドのテキスタイルの認知度アップに貢献している場合ではないのである。

それにしてもサリー。持ち運び簡単、着付け簡単、収納簡単、ウエスト調整自由自在(食べ過ぎてもOK)、体型を問わない……と、本当に便利な衣服である。それに、しつこいようだが、その生地の種類とデザインの豊富さ。

当分は、カクテルドレスの出番はないと、思われる。


氷でできたトナカイたちがひく橇に乗って記念撮影をする家族

地元のバンド、「アパラチアン・ブラス・クインテット」による演奏。学校の教師仲間だったらしい。

すっかりお気に入りとなったライブの楽しめるバー。今夜はピアノ演奏を聴きながら、わたしはスペインのヘレス(シェリー酒)、夫はポルトガルのポートワインで、イベリア半島な夜。

結婚してからは、互いの国に行き来することが増えたけれど、それまでの5年間は、たびたび二人で欧州を訪れたものだ。

シェリー酒の故郷、ヘレス・デ・ラ・フロンティラを訪れたとき、馬のサーカスを見逃したことや、リスボンで、ファドを聴きながら、ポートワインを飲んだときのこと……

どんどん遠くにいってしまう思い出を、追いかけて、捕まえて、振り返らせて、確認して、また前に向かって歩く。


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