SCENE 42: まぼろし
AGRA, NOVEMBER 7, 2004

幻を、見ているようだった。

夢も現も、昨日も明日も、

濁流に押し流されたのちの静寂。

胡蝶の夢、の如き転倒。

朝靄煙る中に浮かぶそれは、

悲しみを、迸らせながら在る。

今、初めて、此処に来た。

たもとに流るるは、ヤムナ河。

彼岸に立つ人らが、見えそうで、

此岸より、目を凝らす。

 

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