電化製品とのつきあい方(1)
3/4/2000

 あなたは、どの位の頻度で電球を変えているだろうか?もちろん、部屋にある電球の数によっても違うだろうが、例えば日本とアメリカのそれを同じ条件で比較した場合、圧倒的にアメリカでの方が頻度が高いはずである。

 アメリカでの暮らしの中で、「なんじゃ、こりゃ〜」と叫ばなければならない理由のひとつに、家電の質の悪さ、があげられる。さまざまな例があるので、少しずつ紹介していきたい。

 まず、電球である。これがまあ、よく切れる。中には長持ちするものもあるのだが、4つ入りのパッケージなどを購入すると、少なくも一つは問題の品が潜んでいる。Long Life と明記されているにもかかわらず、だ。とにかく、衝撃に弱いのだ。たとえば天井など固定された部分につけたものは比較的長く持つ。しかし、電気スタンドなどにつけたものは、ちょっと移動させたり、ぶつかったりすると「ブチッ」と音を立てて切れることがある。電気スタンドが安物だと、なおさら頻繁に切れる。そもそも、がさつな人たちの国、アメリカなのだから、耐久性を第一に考えるべきなのに、大いに矛盾しているのだ。電球の買い置きは大切なのである。

 アメリカに暮らして痛感する。日本の家電は世界一だということを。日本に住んでいる人たちは、日本の電化製品の性能のよさに慣れているから、完璧で当然、壊れるなんて大問題だと思っているだろうが、アメリカに暮らし始めると、大問題の嵐である。なんだかいい加減に作っているな、ということが、たちまちわかるのだ。

 使い勝手のよさなどを追求しないから、新しいモデルが次々に発表されることもなく、たとえ発表されたとしても、外観のデザインが多少変わるくらいで、たいして性能は変わらない。

 例えば掃除機。これがでかくて重くてうるさい。郊外の広い家ならまだしも、マンハッタンのアパート暮らしには、収納場所さえ確保できないものが多いのだ。だからわたしは、ボディとホースが一体になった小型の掃除機を利用している。しかし、ここで問題が発生する。

 壊れやすいことはわかっているから、できるだけ質のいいものを買いたい。しかし、小型の物は全体に安くておもちゃみたいな作りの物が多いのだ。充電式のものは音ばかり大きくてパワーがないし、コード付きのものは、日本のようにスルスルスルッとコードを巻き込んでくれないから、自分で本体のフックに巻き付けなければならない。しかも、紙のフィルターをつけてほしいのに、省エネの発想なのか、フィルター付きではないものも多いのだ。ゴミがたまったら、ほこりにまみれながら捨てなければならない。今時、日本に、こんな掃除機はないだろう。

 自分としては、長く快適に使えた方がいいから、せめて200ドルくらい出してもいいと思っているのだが、この近所のホームセンター(わたしはBed Bath & Beyondというチェーン店を利用している)で買えるのは、50ドルくらいのものなのだ。だから、激しくもろい。安けりゃ壊れていいのか、と思う。

 ニューヨークに来てすぐに購入した小型掃除機の一生も波乱に満ちていた。購入して3カ月目ほどで、本体についているスイッチが利かなくなった。物を移動するときなど、一旦スイッチを切りたいときは、コンセントのところまで行って、コードを引っこ抜くのである。

 そのうち、先端の右車輪がはずれ、左車輪がはずれた。それでもいちおうは動いていたので、以降3年ほど使った。そして先日、あまりにもみすぼらしくなったので、新しい物を買いに行った。やっぱり小型は高くて80ドルだった。

 今回のモデルは、吸い取ったゴミが一目瞭然、外から見えるよう、本体の一部が透明になっている。小さなガイドの表示があるのではなく、直接、ゴミを見せる。スイッチを入れると、大音響と共に、ゴミがぐるぐる舞っている様子が鮮明に見て取れる。気持ちのいいものではない。

 購入してわずか1週間後、本体のスイッチが利かなくなった。壊れるのが早すぎやしないか、今回は。

 でも、わたしは怒らない。面倒だから、返品にも行かない。とりあえず、ゴミを吸い取るという初期の目的を達成しているのだから、もう、いいのだ。電化製品とて、人間と同じ。完璧なんてありえなえい。あれこれと手を出してみたところで、どれも似たり寄ったり。欠点を補ってつきあう方が賢明なのである。(M)


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