ニューヨークで働く私のエッセイ&ダイアリー

Vol. 24 1/8/2001

 


遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

本日1月8日、2001年最初のメールマガジンです。なんだか、随分、ご無沙汰しておりました。皆様はどのような年末年始をお過ごしでしたでしょうか?

日本では、お正月の三箇日はお休みですが、アメリカでは新年2日から仕事はじめです。こちらで生活していると、年末のクリスマス気分は最高に盛り上がるのですが、新年の「お正月気分」はまるで楽しめません。当然ながら、おせち料理も鏡餅も、門松も、初詣もありませんから、もの足りなさを感じます。とても淡々とした新年です。

ここ数年の冬を回想しますと、1999年から2000年にかけての冬の休暇は、スペイン南部をドライブし、正月はコルドバという古都で迎えました。ちょうど1000年前、イスラム勢力がヨーロッパを席巻していた前回のミレニアムの際、コルドバは世界最大の都市だったそうです。今では、過去の栄華をしのばせるメスキータという広大なイスラム寺院があるばかりの、アンダルシアの一都市です。

98年から99年にかけての冬は、日本初上陸のA男を連れて、東京を起点に、富士山、京都、実家のある福岡、そして湯布院温泉などを旅しました。大晦日と元旦は、日本の古都、京都で過ごしました。元日には旅館で餅つきをさせてもらったり、獅子舞を見たり、清水寺へ初詣に行ったりと、日本のお正月を堪能しました。

A男にとっては、今まで彼が訪れたどの国よりも、「エキゾチックでユニーク」な体験ができたようで喜んでいました。尤も、余りにも英語が通じず、常に私に頼らねばならなかったことが苦痛だったようですが。

この冬は、フロリダ州のマイアミとキーウエストに行って来ました。本当なら、もっと暑いカリブ海の島々へ足をのばしたかったのですが、私の就労ビザが更新中のため、国外に出られませんでした。移民局の手続きが遅れているためです。今、海外に出ると、アメリカに戻って来られなくなります。海外で暮らす以上、避けては通れませんが、ビザについては本当に頭を痛めます。

さて、この年末年始の出来事を、簡単にご報告いたします。

 

●暖かなキーウエスト、そして極寒のニューヨーク

12月23日、私とA男は暖かなフロリダ州へ向けて飛行機に乗った。目指すはマイアミ、そしてキーウエスト。マイアミで2泊したあと、レンタカーで、キーウエストというアメリカ最南端の島へ向かう。

マイアミでは、南北に延々と連なる「サウスビーチ」に面した小さなホテルに宿泊した。ビーチ沿いに横たわるオーシャンドライブという目抜き通りには、ホテルやブティック、レストランが軒を連ねている。故ジャンニ・ヴェルサーチの邸宅もある。この辺りはまた「アール・デコ地区」とも呼ばれ、パステルカラーの建築物が立ち並んでいる。

夕暮れ時になると、あちこちの店頭で音楽のライブが行われる。リズムに合わせ、身体をくねらせて踊るダンサー、そして飛び入り参加する観光客。クリスマスともあって、一段と賑やかな風情だ。あたりは中南米の開放的な空気に包まれている。

マイアミでは1日、のんびりビーチで過ごそうと予定していたのに、翌日は激しい風雨。仕方なく「ウインドーショッピング」と「食」にエネルギーを傾けることとする。

ハバナ・シガーを売る店や、オリジナルの香水を調合してくれるパフューム専門店、アンティークショップなどユニークな店が立ち並ぶリンカーン・ロードを歩く。一軒一軒のぞき込んで、疲れたらカフェでひと休み。

ランチは、名物ストーン・クラブ(カニ)のレストランへ。ストーン・クラブはカニの爪の部分だけを食すのがキーウエスト流。捕獲したカニの片方の爪だけを切って、カニを海に帰すという。できるだけ自然のサイクルを狂わせないやり方だ。しかしながら、カニの爪が新たに生えてきて再び両方同じ大きさに揃うまで、10年から15年はかかるという。15年もかけて成長した爪を、私たちは瞬く間に、バクバクと食べる。

マイアミでクリスマスを過ごした後、レンタカーを駆り、アメリカ最南端の島、キーウエストへ。橋(ルート1)で結ばれた、ネックレスのように連なる島々を通過する。この島々を総称して「キーズ」と呼ぶ。最も長い橋「セブンマイル・ブリッジ」は、大海原に浮かぶ道。左右に海を望みながら、ひたすら走る。キーズは、美しい珊瑚礁でも知られ、ダイビング・スポットとしても人気が高い。

キーズの最果てにあるキーウエスト。マイアミ同様、中南米、特にキューバの移民が多く、キューバ料理のレストランや、ハバナ・シガーの店なども見られる。島全体が、東南アジアにも似た素朴な雰囲気が漂っている。

この島では、海辺のコテージに4泊した。コテージには椰子の葉が揺れる中庭があり、プールやジャクージ(気泡風呂)もある。温かいジャクージに浸かって、水平線に沈む夕日を眺める気分は最高だ。

プールサイドで読書したり昼寝をしたりして時間を過ごす。それにも飽きたらメインストリートを歩く。キーウエストの名物のキーライムパイ(ライムジュースを使ったパイで、上にメレンゲが載っている)を、何軒か食べ比べした。おいしいにはおいしいが、激しく甘くて、頭がツーンとする。

キューバのカクテル「モヒト」にも凝った。ラム酒にライム、フレッシュミントの葉などを入れたカクテルで、甘酸っぱく爽やかな味わいだ。食事はエビやオイスター、カニなどのシーフードや、スパイシーなキューバ料理など、おいしいものがたっぷりだった。

自転車を借りて、島内のサイクリングも楽しんだ。灯台に登ったり、ヘミングウェイの住んでいた家を訪ねたり、キーライムパイのファクトリーに出かけたり……。中でも印象的だったのは鶏の親子。灯台の庭を歩いているとぴよぴよと鳴き声がするので、ふと草むらを見ると、鶏夫婦が10羽ほどのひよこを連れて散歩していた。ひよこを抱き上げるとふわふわで、本当にかわいかった。この島にはあちこちで、鶏を見かけた。それに猫もたくさんいた。

あっと言う間に4泊5日が過ぎて、再びマイアミに車を走らせる。キーズの途中の島の、小さな店でランチを取っていると、バーカウンターのテレビからニューヨーク周辺にストームが到来しているとのニュース。30日、ちょうど帰る日がピークのようだ。飛行機は飛ばないかもしれない。

そして30日早朝。マイアミ国際空港。ニューヨーク方面行きの便は、次々にキャンセルの案内が流れているのに、私たちの便は予定通り出発した。ニューヨーク上空は、厚い雲に覆われていた。「着陸前の数十分はかなり揺れます」とのアナウンスが流れる。雲を突き抜けたあとも、あたりは吹雪で真っ白。なにも見えない。しかしながら、飛行機はさほど揺れず、すんなりと着陸した。乗客はみな拍手して、スムースな操縦をたたえた。

ニューヨークは極寒だった。空港からのタクシーもなく、大雪の道を、バスに揺られながらゆるゆるとマンハッタンを目指す。その日の記録的な降雪は、街を真っ白に染め抜いていた。行き交う車は少なく、あたりはしんと静まり返っている。路上駐車の車が、氷原に横たわる白熊のよう。

その日、日本から旅行に来ていた知人夫婦と夕食をとる。彼らが滞在中、ずっと寒くて、道は雪で歩きづらく、とても気の毒だった。ちなみに今日も、まだ雪はあちこちに積もったままである。

年明けの瞬間は、A男とアパートの屋上で迎えた。毛布にくるまって、ハドソン川、そしてセントラルパークで打ち上げられる花火を眺めた。寒くて寒くて気が遠くなりそうだったが、間近で打ち上げられる花火は迫力いっぱいでとても美しかった。

-------------------------------------------------------

こんな感じで、年末年始は過ぎていきました。キーウエストの旅は、いつかmuse new yorkに掲載する予定です。

ところで、ふじやま太郎さんの年末の旅のレポート(前編)が届いています。ホームページに掲載していますので、ご覧ください。スペイン南部を一人旅してきたらしいのですが、悲惨な体験が目白押しです。気の毒なくらいです。「スペインはいいわよ〜」とあれこれ資料などを貸していたのですが……。「さすらい」のロマンチックな風情はかけらもない、ロンリーな旅だったようです。

それでは、今年もどうぞよろしくお願いします。


Back