坂田マルハン美穂のNY&DCライフ・エッセイ

Vol. 64 1/5/2002

 


あけましておめでとうございます。

皆さんは、どんな年末年始をお過ごしでしたか?

私たちは、12月22日にDCからニューヨークへ戻りました。クリスマスイブからクリスマスにかけての夜は、郊外の古城ホテルで過ごしました。また、オペラを見に行ったり、ウッドベリーコモンと呼ばれるファクトリーアウトレットへショッピングに出かけたり、アップタウンからダウンタウンまでを「散策」した日もありました。久しぶりにセントラルパークをジョギングし、白鳥やカモを眺めたりもしました。

2001年から2002年にかけてのカウントダウンは、ハドソン川に浮かぶクルーズ船の上で迎えました。以前、家族が来る予定で購入しておいたディナークルーズの4枚のチケットを、本来はキャンセルができないところを、A男が交渉の末にクーポン化してもらっていたのですが、それをニューイヤーズ・イブの特別クルーズ2人用チケットに、またもや交渉の末、交換してもらったのです。

バトーと呼ばれる全面ガラス張りの船で、マンハッタンやニュージャージー、ブルックリンの夜景を眺めながら食事をしたりダンスをしたり……。ライトアップされた自由の女神のそばで2002年を迎えました。

いつもならば、盛大な花火が打ち上げられるところですが、今年はどの空にも花火が見られませんでした。華やかさに欠ける新年の幕開けでしたが、仕方がありませんね。それでもタイムズスクエア周辺は恒例のイベントで大勢の人々が集い、大にぎわいだったようです。

さまざまな出来事が起こり、これまで以上に自分の生き方についてを真剣に考える機会を与えられた2001年。見知らぬ読者の方々から結婚の祝福を受けたり、またワールドトレードセンターの悲劇の折には気遣いのメールをいただき、メールマガジンを発信していてよかったと感じたこともしばしばでした。

2002年は、私にとって、大きな節目の一つとなりそうです。節目節目を大切に確認しながら、すんなりとしなやかに伸びる竹のように、風に揺られながらも強く真っ直ぐにありたいものだと思います。

数週間後には、ニューヨークからワシントンDCに居を移し、新たな生活が始まります。今までのように、何もかもを独りで抱え込む必要がないだけ、心に余裕が生まれました。

社会人になって以来、十数年間、走り続けてきたのを、少しスピードを落として、周りの風景を眺めながら、本来やりたかったことに割く時間も増やしていこうと考えています。

今年一年は私にとって、次なるステップへ向けての「準備期間」になりそうです。ひたすら書くことを始めるのに加え、改めて英語の勉強をしたり、これまでに書き留めておいたノートを整理したり、あるいはずっと昔にやめてしまったピアノのレッスンを始めたりと、当面やりたいことが山積しています。

また、ミューズ・パブリッシングのDCにおける営業活動も、一から始めなければなりません。でも、マンハッタンで、何もないところから仕事を始めたことを思えば、さほど苦にはなりません。きっと何とかなるに違いありません。

やや大げさな表現ですが、「人生の整理整頓」をする機会を得られると言うことは、とてもありがたいことだと思います。少なくともこれまでの36年間は、ひたすら前に進むばかりで、色々な大切なことを取りこぼして来たように思えるからです。

立ち止まり、振り返る。そこに自分が歩いてきた一本の道が、まっすぐに伸びているとするならば、その傍らに幾つもの、捨ててしまうには惜しいものが転がっている気がします。それらのなかから、どうしても取っておきたいものだけを、拾い集めておきたい気がするのです。

埃をかぶってみすぼらしく見える石でも、磨けばピカピカの輝きを見せるかもしれません。

たとえば私が70歳代まで生きられるとするならば、今すでに、半分を終えたところです。けれど、まだまだやりたいこと、やらねばならないことはたくさんあります。

* * *

今の私には、書きたいことがたくさんあります。それは日常生活の記録から、エッセイ、過去の出来事、これまで訪れた国々のこと、またフィクションに至るまでさまざまです。今、それらは私の頭の中で混沌としており、どこからどう手を付けていいのかわからない状況です。

わからないなりにも、公表できるものは、少しずつホームページにアップロードし始め、それとは別に公表していない作品も書きため始めています。

年末から、ホームページの片隅に「坂田マルハン美穂」個人のホームページを作り、そこに「日記」と「食の記録」を書き始めました。日記は、人の目に触れて構わない程度に日常の出来事を綴った、まさに日記。食の記録は、このメールマガジンの読者の中でも、特に食べ物の話しに興味がある人が多いことから、あえて別立てで作ってみました。おすすめのレストランについては、住所や電話番号も掲載しています。

ここ10日間、試験的に毎日書き始めて、精神的に随分すっきりとしています。日々のどうしようもない出来事ながらも、綴ることが自分の精神状態にとっていかに有効かがわかりました。

仕事の文章ならば構成や推敲に時間を要しますが、日記や食の記録は、あっというまに書き上げられるので、同じコンピュータに向かうのでも苦になりません。

そんな中で、このメールマガジンについて、どの部分を送信していけばいいのか、少し悩んでいます。これまでは「エッセイ的なもの」と「日記的なもの」を混在させて、思うままに書いてきましたが、自分の中でもう少し、それらを別々に整理していこうと思い始めています。

日記的なものはホームページに記し、メールマガジンにはテーマごとのエッセイを送信する方がいいような気もしています。今のところ、はっきりと考えがまとまっていません。まとまり次第、次号を送信するつもりでいます。

そういうわけで、今年もどうぞよろしくお願いします。