坂田マルハン美穂のNY&DCライフ・エッセイ

Vol. 72 5/18/2002

 


久しぶりにのんびりとした週末。厳密に言えば5週間ぶりに、A男と二人で過ごす週末です。先週、A男の両親もは2週間半の滞在を経て、にこやかに旅立っていきました。渡米前、二人は、わたしたちがどのような生活をしているのか、気になっていたようですが、元気に楽しくやっている様子を見て、ずいぶんと安心したようです。

さて、先週はまたもや1カ月ぶりにマンハッタンへ行ってきました。このメールマガジン、そもそもは「ニューヨークで働くわたしの……」と冠していて、読者の方々もそもそもはニューヨークに興味があって購読を始められた方が多いはずだから、ということで、今回もニューヨークでの出来事はしっかりとレポートしようと思います。

レポート、といっても、個人のホームページの方に掲載している日記と食の記録をミックスして、今回はほぼそのままに転載します(文章のノリがやや軽薄ですけど)。かなり長いので、お時間のあるときにごゆっくりどうぞ。

それから、ミューズパブリッシングのホームページに、ワシントンDCの写真などをたくさん掲載していますから、こちらも興味のある方はごらんください。

 

●5月13日(月):DCくもりNY風雨
1カ月ぶりのマンハッタンは寒かった。
先月は真夏だったのに。竜巻怖い。

月曜日の朝。A男はボルティモア本社までの出社だし、そのうえ今日は、彼の両親とお別れのあいさつしなきゃならないしで、なんだか気ぜわしく、気軽に半袖のシャツを着て、カーディガンを腰に巻いて、スーツケースには半袖の服とサンダルを入れて、家を出た。

午後1時過ぎにマンハッタンに到着して、ペンステーションの外に出て、愕然。

寒い! 雨! 風が強い! の三拍子。みんなコート着てる。体感温度まちまちのニューヨーカーのはずなのに、半袖着てるのわたしだけ!

今回、ホテルは駅の目と鼻の先に予約しておいたので、小型スーツケースを引っ張りつつ、ほぼ駆け足でなだれこむ。

もう、マンハッタンに自宅はないのだから、洋服は慎重に選ばねばと3月に来たときに思ったはずだった。あのときも、DCは暖かだったのに、マンハッタンは久々の雨で寒かったのだ。今回もそうよ。しかも嵐よ。わたしって、本当に学ばない人間……。

3時から会う予定だった友人(郊外在住)は風邪を引いてしまいキャンセル。その時間を利用して、メイシーズでお買い物。もちろんジャケットを買いに。時節柄いいジャケットがなかなか見つからず(だって夏物が主流ですもの)思いがけず結構高いものを買ってしまった。というか、選択の余地がなかった。なにやってんだか。

言い訳するわけじゃあないけど、先月、母と妹と来たときは真夏の暑さだったのよ。その感覚が残ってたから、まさか再び冬になってるとは思わないじゃない。ちなみに先月のあの気温は、4月にしては100余年ぶりの最高気温だったらしい。わたしって、普通じゃない天候のときばかりを選んで来ている気がする。ああ。

打ち合わせにはサンダルを履いていくつもりだった。それ以外はスニーカーしかない。しかしサンダルじゃ寒すぎる。スニーカーは黒だから、ごまかしてこれを履いていこう。靴まで買うのはなんだからねえ。

夜はロウアーイーストサイドにあるレストランでジュエリーデザイナーのHさんと待ち合わせ。わたしの婚約指輪をコーディネートしてくれた例の女性だ。彼女は母君の住むバリ島とお姉さまの住む東京、そしてニューヨークを転々とする生活。

さて、待ち合わせの店は「71CLINTON」。食べることが大好きな彼女が一度行って気に入ったという店。住所がそのまま店名になっている。新しもの好きな若いニューヨーカーにも人気の店で、時々雑誌などでも見かけていた。

チャイナタウンとイーストヴィレッジの境目あたりで、周辺の雰囲気はいまいちだから、この店の存在感はやや浮いている。こぢんまりとしたカフェ風のレストランで肩の凝らないカジュアルな雰囲気。気軽に、だけどきちんとしたものを食べたい時にいい感じだ。

わたしはやや早めについたので、ハーフグラスのドライシェリー(へレス)をオーダー。ちなみにシェリーはそもそもスペイン南部のへレス・デ・ラ・フロンテーラという地域で作られていて、スペインでは地名そのままに「へレス」と呼ばれているのだが、イギリスに輸出されて人気を集め、イギリス流に「シェリー」として全世界に知れ渡ったという(このこと、以前も書いたような気がするけど、もう一度書く)。

シェリーとは、白ワインを発酵させている途中、もしくは発酵後にブランデーを加えた酒で、一般のワインが「スティル・ワイン」と呼ばれるのに対して、「フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)」と呼ばれる。

シェリーは、甘口のオロロソ、辛口のフィノに大別される。更にそもそものブレンドの具合などによって、琥珀色のもの、白ワイン風の色のものなど、さまざまな種類がある。

ゴンザレス社のTIO PEPEや、サンデマン社のシェリーは日本でも有名だと思う。ちなみに、以前スペインに行ったとき、へレス・デ・ラ・フロンテーラに立ち寄ってゴンザレス社のシェリー工場を見学した。そもそもシェリー酒が好きだったのに加え、「工場見学」が好きだと言うことで、アンダルシア旅行の際、わざわざこの地を訪れたのだ。

この街は、世界で唯一、馬のサーカス学校があって、観光客も馬のサーカスを見学できるのだが、わたしたちが行ったときにはあいにく新年でお休みだった。

話が長くなった。

魚介類と肉類、どれにしようか悩む。魚類メニューには、「そば」や「鰹出しスープ」といった付け合わせがみられ、和風テイストを取り入れていることがうかがえる。ハマチもYELLOWTAILと英名を書かず、いきなりHAMACHIって書いてある。ある種、気取ってる。

しかし日本人にしてみれば、鰹出しはちょっと不安。どんなのが出てくるか怖いから、結局シーフードはよして、ポークチョップかラムのどちらにするかで迷う。と、隣のテーブルに出されたポークチョップが、あまりにも分厚くて、しかも肉全体が「パサパサ」に見えたから、ラムに決定。

ちなみに前菜はあっさりとグリーンサラダを選ぶ。新鮮な各種青菜がミックスされて、パルメザンチーズのスライスがほどよいボリュームでトッピッングされたおいしいサラダだった。

メインのラムは、ブロック状のグリルされたラムが3切れと、チャンク状の煮込みラムがキューブ状に固められたもの一切れ。それにクスクスが添えられている。ちなみにクスクスとは、モロッコなどアフリカで食べられている小さな粒状のパスタで、ご飯粒を丸くした感じ。この店のクスクスは比較的大粒だったけれど、ほどよい歯ごたえでラムによく合い、おいしかった。

ラムはいつものようにミディアム・レアで頼んだが、ほどよい焼け具合で、非常に柔らかくなめらかな舌触り。味付けも強すぎず、弱すぎず。しかしチャンクの方は、やや味が濃くて、それに量が多すぎて、食べきれずに残す。

二人で赤ワインを1本開け、ゆっくりと料理を味わい、食後はエスプレッソでしめくくり(ほのかさんは料理を控えめにしてデザートを食べていた)、充実の夕餉だった。ちなみにチップ込みで一人70ドル弱。食前酒、デザート、コーヒーを含めてこの値段は、クオリティに対してなかなかリーズナブルだと思う。

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71 CLINTON FRESH FOOD
71 Clinton St. (Rivington St.)
212-614-6960

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ちなみに夜、A男と電話で話したところによると、彼らがボルティモアでミーティングをしているとき、近くを竜巻が通過したらしくて、途中であたりが灰色に包まれ、大粒の雹(ひょう)が降り出して、どえらく怖かったらしい。

なんでもカリフォルニアのオフィスとビデオミーティングをしている最中だったのが、カリフォルニアの人たちが、ボルティモアオフィスを映し出すビデオの、窓の向こうのただならぬ空の様相に慌て始め、ミーティングを中断し、みなで天気予報を見たという。

すると4時半ごろ(つまりちょうどそのころ)、ボルティモア界隈を竜巻が通過するという予報が流れていた。周辺は風速45〜70マイルほどになるから、車に乗っている人は直ちに避難せよ、というインフォメーションが流れていたらしい。

70マイルと言えば112キロよ。おっそろしー!ったらありゃしない。

A男のオフィスの面々、知的であると同時にとぼけた味を出している人々が多い個性派集団だから、みなクールであろうと努力しつつも内心おろおろナーバスな状態が見え見え。一同(A男も含め)、大粒の雹(ひょう)に驚愕し、一面どす黒く染まった空と暴風におののき、焦りまくっていたらしい。

ところが突然、それまでの暗雲が嘘のように、まばゆい青空が広がった。ボスの一人が「ぼくたちは、今、竜巻の中にいるのか?」と言えば、周囲は「そうかもしれない」と同意し(そんなわけないやろ!)、しかし、青空が長いこと続いて、ずっとそのままだったから、竜巻が通過してしまったのだというところで話はまとまり、しかしそれ以上ミーティングを続ける空気ではなくなり、みな早々に帰宅したという。

アメリカは竜巻がしょっちゅう発生するからねえ。特にメリーランド州は竜巻がよくやって来るのだ。あんなものに巻き込まれたらひとたまりもない。近寄って来ないでほしい。

 

●5月14日(火):晴れだが寒くて風強し。
久しぶりの中国系印刷所。
ネイルサロン経由、五番街散策してソーホーへ

午前中は地下鉄でクイーンズまで。久々に例の中国系印刷所に行くのだ。今回のマンハッタン滞在の第一目的は、この印刷の立ち会い。いくら再印刷とはいえ、やはり現場を見ておかなければ心配だから。

結果としては、やっぱり行ってよかった。久々にマネージャーの仮にジェームズにも会い、なんとなく懐かしい。わざわざわたしがDCから足を運んできたことが印象的だったようで、別の仕事の見積もりなども、割安で出してくれた。うれしかった。

カラー印刷のおじさんは相変わらずまじめそうに淡々と、モノクロ印刷のお兄さんは相変わらず面倒くさそうに淡々と、仕事をしている。今回の再印刷はモノクロ、カラーどちらもあるから、まとめてチェックする。

やっぱりその場でインクののりなどを相談しながら進めないと、任せきりでは難しい。たとえ4年前の印刷物と同じように刷ればいいといわれても、4年前に比べると見本誌も色あせているし、それよりも鮮やかに出た場合は、多少前回とは色が違っても、そちらを優先したほうがいいし……。そういう塩梅って、電話だけでは伝わらないものだから。

カラー印刷のおじさんの輪転機の裏側の壁には、かつて中国人女優のヌード写真が1枚貼られてたんだけどさ。今回、半年ぶりに出かけたらなんと3枚に増えていた。あどけない顔をした少女風。そういうのが好みなのね。

さて、印刷の「肝」の部分のチェックを終え、昼頃、印刷所を出る。それにしても風が強くてかなわない。地下鉄駅への道のり、髪の毛をライオン丸のように逆立てながら、ジャケットの合わせをぎゅっと押さえ込むようにして歩く。

ランチはなんだか日本のカジュアル・ミールが食べたくなり、「めんちゃんこ亭」という福岡出身のオーナーが経営する麺屋へ。ここでチャンポンなどを食べ、身体を温める。久々にチャンポンはおいしかった。

その後、ネイルサロンで、マニキュア&ペディキュア。新しくて快適なサロンだった。DCのネイルサロンの相場はマンハッタンの2倍だから、マンハッタンに来たときに手入れしようと決めていたのだ。ちなみにマニキュア10ドル、ペディキュア28ドル、簡単なマッサージつき。今回はシャンパン色の柔らかなゴールドにしてもらった。

五番街を歩き、Rippluというランジェリーショップに立ち寄り、マネージャーのAさんに会いに行く。彼女とわたしは、同じ歳で同じ時期にニューヨークに来た。そもそもは仕事を通して知り合ったのだが、わたしはここで下着を買っていることもあり、折に触れ、よくおしゃべりをしていたのだ。

ここしばらく入れ違いが多くて、もうかれこれ1年ほど会っていなかった。次回、一緒に食事をしようと約束をして別れる。

その後、ダウンタウンへ。ソーホーを散策し、CANAL JEANというジーンズの品揃えがやたら豊富なカジュアル・ファッションの店で新しいジーンズを購入。その後、サリヴァンストリートを目指し、SULLIVAN STREET BAKERYというイタリア系のパン屋で朝食用のパンを買う。

ここのパンは、以前友人がお土産に買ってきてくれたのを食べて以来のお気に入りなのだ。特にチーズがたっぷり入ったパン。カテゴリーとしてはピザになるらしいけれど、見た目はフォッカチオという感じ。

Bianca con Pecorinoというのが正式名称だけど、「チーズ・ブレッド」と言っても通じる。チーズがゴロゴロ入ってて、それをオーブンもしくはフライパンで温めなおして食べると抜群においしいのだ。でも、そのままでもおいしいから、いつも買った直後、歩きながらついつい食べてしまう。ちなみにヘルズキッチンにも支店がある。

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SULLIVAN STREET BAKERY
71 Sullivan St.
212-334-9435

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パンを買い、ソーホーをしばし散策し、カフェで夕方から早くもワインを飲みつつ、ノートに原稿などを書く。最近は手書きで原稿を書く機会を増やしているのだ。もちろんあとから入力し直す必要があるけれど……。そして6時過ぎに、S子さんとM子さんと待ち合わせているレストランへ。

彼女らには2カ月ぶりの再会だが、かつてわたしがニューヨークに住んでいた頃はこんなに頻繁に会っていなかったから、なんだかそんなに時間の経過を感じない。二人とも相変わらず元気そうで、毎度のごとく、テンション高く会話。

DCに遊びにおいでよ、といいつつも、それぞれのスケジュールの都合でなかなか実現しない。特にキモセラピー(抗がん剤治療)を続けているS子さんには、たまにはマンハッタンの雑踏から離れて、緑いっぱいの環境を楽しんでほしいものだと思う。

マンハッタンに住んでいるときには、自分の波長がマンハッタンに同化していたし、エネルギーも循環していたから特に気付かなかったけれど、しばらく離れて久しぶりに訪れると、この街に暮らし続けるにはいい意味でも悪い意味でも、エネルギーが必要で、消耗することが多いことに気付く。

いずれにしても、心身がうまく調和(バランス)していることが、大切だということを、自分の心や身体の欲するものが何なのか、耳を傾けることが必要だということを、感じさせられる。

 

●5月15日(水):今日も晴れてるようで暴風。にわか雨少々
ミーティングをすませ、エステティックサロンへ。夕食は日本料理

今日はさらに風が強い。しかし気温は上がったようだ。一旦はスニーカーで外にでたものの、「これならいけるかも」と再び部屋に戻り、サンダルに履き替える。せっかく手と足の爪をきれいにしたばかりだもの。たとえ誰も気付かなくても、きれいな手足を見るのは、自分の気分がいいからね。

午前中は書店その他へ出かけ、午後の打ち合わせに備えてミッドタウンはグランドセントラルステーション周辺へ向かう。この近所は日本食料理店が多いから、ランチは日本食にしようと決めていた。

無性に「天ざるそば」が食べたくなり、とあるレストランの店頭に掲げられているメニューをチェックしたところ、ちゃんとメニューにあったので入る。

お茶を飲みつつ、メニューを広げ、天ざるそばを探すが見つからない。ウエイトレスに聞くと、「昼はうどんしかないんですよ。そばもできないわけじゃないけれど20分以上かかりますよ」と言われてムッとする。

天ざるそばがないんだったら、他の店に行くんだった。でも、打ち合わせまで時間がないし、諦めてサバの塩焼き定食にする。それにしても、なんでサバの塩焼きにケチャップ風味&具なしスパゲッティを添えるのだろう。しかも大量に。

ランチの話はさておき、食後は某日系旅行会社で打ち合わせ。ミューズパブリッシングがこの会社の会社案内を制作していて、今年も内容の変更と再印刷を依頼されたのだ。

一年ぶりに担当者の男性と対面し、しばし世間話。米国の旅行業界はテロ以降、一層、苦境に立たされているが、この会社はそれでもひとまず活気があって、よかった。当たり前だが、自分のクライアントのビジネスは順調であってほしいものだ。

その後、かつてニューヨークに来たばかりのころ、一時期勤めていた日系の出版社へ。先日、ここの社長から電話があり、次回ニューヨークに来たときに訪問することを約束していたのだ。

この会社はニューヨークが本社でロスにも支社があるのだが、ワシントンDCは今のところ拠点もなく何の営業もしていないということで、お互い何らかの形で仕事ができれば、という感じで話がまとまる。ここでもしばらく世間話や近況報告などで時間を過ごす。

夕方はエステティックサロンのSHIZUKA new yorkへ。ミューズパブリッシングはここのブローシュアやプレスキットの制作、それにニューズレターなんかも作っているのだが、そもそもの出会いはわたしがお客として訪れたのがきっかけだった。

オーナーのSさんのことはこれまでも何度か書いたが、今日もまた彼女と夕食の約束をしていた。

今日は「印刷物&請求書のお届け」とわたしの「レーザー脱毛」と「夕食」の3セットをまとめて一気に。

レーザー脱毛……。ううむ。わたしにもちょっとばかり恥じらいがあるから、こんなことを公言するのは多少(かなり)はばかられるが、でも、SHIZUKA new yorkの宣伝にもなるから、敢えて書く。

ぜひおすすめします。レーザー脱毛。いいですよ。

わたしは膝下だけをしてもらったんだけどね。自分で剃ったり抜いたりして、膝下が野性的になってしまった女性って、結構いると思うんだな。そんな方におすすめです。もちろん、膝下だけでなく、さまざまな部位の脱毛プランがあります。

去年、2回受けて、ほぼすっきりとしたけれど完全ではなく、3回目を受けようと思ったところで仕事が立て込み、結婚式だのテロだのと言ってるうちに年が明けて今日まで来てしまった。

で、今日が3回目だったのだけど、これで当分はすべすべお肌のままじゃあないかな。回数その他は個人差があるみたい。確かに決して安くはないけど、気軽に素足出せる感じは、本当にいいものよ。長い目で見ればリーズナブルだと思う。でも、やってもらってる最中は結構、痛いから肩に力が入って少々疲れる。

でも、まもなく更にいい機械を購入するらしくて、それは刺激もかなり少ないらしいんですって。レーザー脱毛他、フェイシャル、マッサージその他に興味のある方は、こちらを見てね。

http://www.shizukany.com/

夕食はSさんの提案で、アッパーイーストサイドにある「どんぐり」に行くことにした。日本人の夫妻が経営しているという小さな店で、以前から料理がおいしいとの噂を聞いていたのだが、場所柄うちとはセントラルパークを挟んで反対の方向だったから、なかなか行く機会がなかったのだ。

和風の店内かと思いきや、こぢんまりとした欧州のビストロ的な店。家庭的な雰囲気も少しばかり漂っていて、なかなかに居心地いい。グラスのハウスワイン(赤)も、値段の割においしくて、乾杯直後から幸せな気持ちになる。

手書きのメニューには、今日のおすすめ料理ほか、一品料理やおつまみ、食事のメニューなど結構種類も多い。

わたしたちは、一応別々にオーダーしたものの、結局はシェアして食べる。ワカメの酢の物、春菊の白和え(久々の春菊がおいしい!)、牛のたたき(小振りで上品)、エビの丸ごと塩焼き(生きていた新鮮なものらしい)、刺身の盛り合わせ(前菜の刺身だけれど5種類ほど入っていてネタも新鮮)など、おつまみ風の料理をワインと共にゆっくりと味わう。

最後に、昼間食べ損ねた天ざるそばをわたしもSさんもオーダー。天ぷらは小振りのエビが二つだけでボリュームは少なかったから、残さずおいしく食べられた。やっぱり日本食は、ヘルシーな感覚で胃に重くないし、いいものだ。

あんこが手作りだということで、せっかくだから抹茶アイスのあずきあん添えを食べる。甘すぎず、おいしかった。ちなみに値段は一人あたり64ドル(チップ込み)だった。クオリティ&食後の充足感を考えるとリーズナブルだと思う。

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DONGURI
309 E. 83rd. St. (bet 1st. & 2nd. Sts)
212-737-5656

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●5月16日(木):暖かくて快晴で
昼頃、ニューヨークを出てDCへ。
A男と一緒に1週間ぶりのジョギング

いつも帰る日はいい天気なのよね。感じ悪い。荷物を引っぱりながら半袖サンダル姿でペンステーションに向かい、帰路に就く。

DCはさらに気温が高く、暑いほどだった。タクシーでマサチューセッツアベニューを走っていると、どこかの大使館の庭にある大木が見るも無惨になぎ倒されていた。ドライバーいわく先日の強風で倒れたのだとか。そんな木がいくつもあるという。

あんな大きな木が倒れるなんて……と驚きつつ帰宅。

A男は今日、車検に行って、そのままくたびれて帰宅し、家で仕事をしていた。観葉植物はみんな元気でほっとした。母と妹が買ってくれていたミニローズがどんどん大きくなって、つぼみをいっぱいつけている。

A男と二人きりになるのは久しぶりで、なんだかホッとする。ホッとするけど部屋が散らかっていてゾッとする。明日は大掃除だ。

しばらく仕事をして、夕方からA男とジョギング。今日はマサチューセッツアベニューを下って、デュポンサークルのあたりまで。行きは下り坂で楽なのだが帰りが上りだから辛い。

緑の木々に包まれた各国大使館の前を走る。庭に咲くバラの花などを見ながら……。小さくてクリーム色のハナミズキが今、シーズンらしく、あちこちで花を付けている。ハナミズキにもいろいろな種類があるからね。

タクシーから見えた倒れた巨木を間近で見た。驚いたことに、木の中が空洞になっていた。どうやらシロアリだかなんだかわからないけど、虫に蝕まれていたようだ。だから、こんなに大きいのに、折れてしまったのね。

表面から見るだけじゃわからないけど、こうして虫にやられてる木がたくさんあるのだろうか。それにしても、フェンスやら標識やらをなぎ倒して横たわる大木は痛々しかった。

帰り道、カテドラルのビショップガーデンへ。ここにも色とりどりのバラの花が開き始めていて、それはそれは美しい。ぷっくりとしたつぼみもいっぱいだ。今はまだ2割ほどしか咲いていないけれど、来週あたりはかなり開くのではないだろうか。

芝生の庭の、大木のたもとに寝ころんで、梢と、カテドラルの屋根と、夕映えの空と、飛行機雲を眺めながら休憩。

さあ、来週からは生活のペースをもとに戻し、仕事に集中しよう。

 


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