●死に急ぐ鯨たち

鹿児島県大浦町の海岸に、マッコウクジラ14頭が漂着し、1頭をのぞいてすべて死んだらしい。

安部公房の作品に「死に急ぐ鯨たち」というエッセイ・インタビュー集がある。

ほ乳類である鯨は、記憶の隅に「陸上への懐かしさ」のようなものが組み込まれており、何かの弾みにそれが作用し、実際には陸上で生活できる機能がないにも関わらず、ぐんぐんと陸を目指して泳ぐ……といった解釈の文章が書かれていたように思う。

彼はこの「鯨の集団自殺」現象をモチーフに使って「第四間氷期」という作品を書き上げている。学生時代、この作品を初めて読んだときは安部公房の理系の知識の深さに驚かされたものだ。非常に面白い。

陸を目指す鯨の脳裏には、いったい何が見えていたのだろう。(1/22/02)

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