JUNE 21, 2005/ DAY 9
MONUMENT VALLEY: NAVAJO TRIBAL PARK & THE NAVAJO RESERVATION (UTAH)
遥かなるノスタルジア。父と、大地と、イーグルと

ナヴァホのおじさんが運転するジープは、ヴィジターセンターを出てまもなく、ヴァレー・ドライヴのオフロード(未舗装路)に入った。車が砂塵を上げはじめ、前方に大きな砂岩が迫ってくる。その瞬間、涙がどうどうと溢れてきた。

最初は、ジョン・ウェインの写真を見て、父を思い出したせいかとも思ったが、それだけとも思えない。もともと、感極まりやすいたちではあるけれど、それにしたってというくらい、涙が出てくる。心の奥深い場所から、力強い郷愁がこみあげてくる。なんだかとても、懐かしい。

更には、やはり、父を極めて近くに感じる。父が生きていたときにも、死んだあとにも感じ得なかった、父に対する親密な気持ちに包まれた。

持参していたタオルで、何度も顔を拭う。ファウンデーションも日焼け止めも取れてしまいそうだ。あまりの砂埃に、コンタクトレンズにゴミが入って、涙が出るんだろうか。と、自分でもよくわからなくなるほどだ。

わたしは、すでに2、3歳のころから「郷愁」に似た感情を抱いていた。当時住んでいた家の縁側で、空気が乾き、青空が美しい日、日溜まりのなかで、ぬいぐるみのみいこちゃんときりんさんを抱きかかえ、横たわることがあった。

視界の向こうに小さな山が見え、その稜線に幾つかの木々がぽこぽこと見える。青空と、そこに浮かぶ白い雲、山の稜線、そして彼方から聞こえてくる飛行機のエンジン音。このセットがとてつもなく、幼児期のわたしの心を「懐かしさ」で満たしてくれた。

今、この乾いた大地と光景が、あの懐かしさと交錯する。

それは単なる偶然かも知れないけれど、偶然ではなくて、いくつかあるはずの前世の一つはここだったかもしれない、と思いを馳せてみるのは、楽しい。無論、夫にそういう話をすると、「非科学的」とか「ナンセンス」だとかいって、すっかりわたしをバカにするので、口にはしないけれど。

わたしはこの空を舞うゴールデン・イーグルだったかもしれないし、ナヴァホ・インディアンの娘だったかもしれない。それでもって、父は同じ種族の酋長だったかもしれないし、メディスン・マンだったかもしれない。

ほかにも、モンゴルの遊牧民だとか、インドのジャイプールの宮殿に住んでいた姫だとか、植民地時代の東南アジアに住んでいた英国人だとか、思い当たる我が前世の姿はあれこれあり、どれもまったく信憑性はないのだが、それはそれで、いいのである。

なるほど、わたしはインディアンもやっていたのか……などと好き勝手に夢想しつつ、最初にジープが停まった「ジョン・フォード・ポイント」で車をおりる。そこは、ジョン・フォード監督がしばしば撮影で使った一帯だという。わたしは彼の映画を見たことがないので、いつか見てみたいと思う。

ちなみにここは、"BACK TO THE FUTURE III" が撮影された場所でもある。

その場所は、いくら写真に撮ったところでもう、じれったくなるくらいに、そこに立たなければ、だめなのだ、というくらいの迫力と壮大さで、訪れる人間を包み込むようにあった。

わたしたちは、広大なその一帯を、行ったり来たりしながら、さまざまな角度からの風景を眺めた。あちこち回るところがあるようなので、そんなに長いこと同じ場所にいられないだろうとはわかっているのだが、どうにも立ち去りがたい。ガイドのおじさんも、催促するでもなく、店を出しているナヴァホの人たちと話をしている。

ああ、もう、なんという場所なのだろう。たまらんね、という感じである。もう、語彙がない。あらゆる伝達が無力だ。ここに、この場所に、立つ以外には、わかちあえない。


ELEPHANT BUTTE。別の角度から見ると、象に見えるらしい。

THREE SISTERSの前で。長女、三女、次女の順で、3人姉妹が並んでいる姿らしい。

観光客向けにはWelcomeの"W"なのだ、とのこと。

JOHN FORD'S POINT。彼は撮影の際、ナヴァホの人たちを雇用し、信頼関係が築かれていたのだという。

人間が豆粒みたいに見える。

ナヴァホのお姉さんが出している露店で、彼女手作りのドリームキャッチャーのネックレスを買った。ヒノキ科の植物、ジュニパーで作られている。ジュニパーの精油は心身を癒すなどの効果があり、魔よけのような意味合いも持つと言う。

まるでドラゴンが横たわっているように見えるビュート。

こちらはサブマリン、潜水艦だ。

まるで「フィギュア」のように小さなわたくし。

絶対に、我々の車では走ることはできなかった、この砂まみれのでこぼこ道。上下左右に跳ねたり揺れたり、砂埃は濛々と舞い上がり、目薬、タオル、帽子は必携。砂埃と乾燥で、髪の毛がバリンバリンになった。ドリームキャッチャーも揺れる揺れる。

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