JUNE 24, 2005/ DAY 12
SEDONA (ARIZONA)-
果たしてヴォルテックスとは? 地球の力を受け止められるという場所へ

夕べは遅くにベッドに入ったにも関わらず、太陽が昇る前に目が覚めた。それはもう、ぱっちりと、目が覚めた。「行かねば!」と思うと同時にガバリ、とベッドから起きあがり、服を着替え、身繕いもそこそこに、車の鍵を片手にサンダルを履く。

「ちょっと、ヴォルテックスに行ってくるから」と、夫に耳打ちすると、「ナンデスカ〜」と寝ぼけた返事。「朝日を見てきます。すぐ帰ってくるから」と行って、ドアを閉めた。

ヴォルテックスの在処は、「ここだ」という明らかな点(ポイント)が示されているわけではなく、大ざっぱに、ある地域一帯が示されている。夕べホテルのスタッフに教わった最寄りのヴォルテックスは、小高い丘の上にある小さな空港とルート89Aを結ぶエアポート・ロード沿いにあるのだという。

ホテルから1マイルほど走ったところで左折し、エアポート・ロードに入る。どこで車を停めるかは、直感で決めるべきだろうと思い、五感を研ぎ澄まそうとするが、どう研ぎ澄ませばいいものやらよくわからない。少し走ったところで展望台のような小高い岩場が見え、その駐車場に車がたくさん停まっていた。

そうかここなのか、と思いつつ、ちょうど出ていく1台の車と入れ違いに、自分の車を停める。みな、ここへ日の出を見に来たのだろう。誰に聞いたわけでもないが、日の出のころは、日中よりも、より地球のパワーを受けられるような気がしたのだが、本当にそうなのだろうか。

その赤い岩山はかなりの傾斜があり、サンダル履きで来たことを後悔した。足を滑らせないように、両手を使って慎重に上る。そもそも早朝で身体がこなれていないから、気を付けなければ足をくじいてしまう。息を切らしながら斜面を登りきると、視界が広がり、セドナ一帯を一望できるすばらしい眺望が目前に現れた。

ほどよく冷たい、澄み切った朝の風が吹き、今現れたばかりの朝日が鋭く白く、周囲の赤い岩肌を照らしている。日の出に一歩遅れたわたしは、日の出前から来ていたのであろうグループと入れ違いになり、幸い静寂を手に入れることができた。丘の一画で、若い男性がひとり、ヨガをしている。

やがて彼も去り、わたしはそこに、一人きりになった。サンダルを脱ぎ、蓮華座を組んで、目を閉じる。朝日の温もりが身体全体を包み込み、同時に風が吹き抜けていく。とても、気持ちがいい。

正直に言えば、何がどう、ヴォルテックスなのか、わからなかった。それはもちろん、目には見えないし、その磁力のようなのものを明らかに受信できたわけでもない。ただ、非常に平穏で、気持ちがよかった。

無論、こんな見晴らしのいい場所ならば、ヴォルテックス云々に関わらず、気持ちよくて当然だろうとも思った。10分ほども、そうして瞑想もどき状態を続けていただろうか……。やがて、別のグループがやってきて、静寂は途切れたが、それでも神聖な空気は保たれていた。

さっぱりとした気分で岩山をおり、ホテルに戻る。夫はちょうど起きてヨガをはじめているところだった。ヴォルテックスのことを説明したら、自分も行ってみたいという。出発前に、立ち寄ることにした。

川辺での朝食をすませた後、ホテルをチェックアウトし、色鮮やかな花々に見送られるようにして、居心地のよかったオーベルジュをあとにする。そして今朝訪れたエアポート・ロードの展望場所へ再び車を走らせる。

朝に比べると、空気がまろやかになっており、つまりは「鮮度」が失われているような気がしたが、やはり心地の良い場所には違いなかった。わたしも夫も素足になり、岩肌に直に触れる。日差しの温もりを吸収して、ほの温かくなった岩肌は、ただ触れているだけで心が穏やかになるようだ。

入れ替わり立ち替わり、人々は訪れ、写真を撮り、目を閉じ、諸手を広げ、座し、それぞれに、この地の空気を受け止めている。

わたしたちは、そんな人たちと挨拶を交わし、ときにおしゃべりをし、結局は1時間近くも座ったり立ったり、瞑想したりして過ごした。気持ちよくて、立ち去りがたい場所だった。一人で来ていたある男性は、丘の上にたどり着くなり、その風景に感嘆し、目を潤ませていた。彼はなにか強い力を感じていたのかもしれない。

そろそろ出発しなければと、丘を下り、車に乗り込んだとき、身体の調子が少し違うことに気がついた。それは、鍼とかマッサージを受けた後の感覚とよく似ていた。鍼治療の後、車に乗って家に帰るときの、気だるくリラックスした感じ。あえて変化を探ろうとしていたのではなく、これはとても自然に、身体に感じられた変調だった。

あの岩の上で数時間過ごせば、肩こりや腰痛が癒えるのではないか、そんな気がした。


早朝のエアポート・ロード沿いからの景観。セドナの全景が見渡せる。

寝ぼけ顔だが、見知らぬ人に記念写真を撮ってもらった。

オーベルジュの庭に咲く花々

今日は12穀パンのトーストと、カニ肉のオムレツ。

それとフルーツ。

花々に見送られてオーベルジュをあとにする。

夫とともに、再びエアポート・ロードへ。

ヴォルテックスを巡るツアーガイドのお姉さん。

時折小型飛行機が離発着する。

ちょっと、イーグルになってみる。

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