SCENE31: インド出張。ドサで始まる、俺の朝。
BANGALORE SEPTEMBER 11, 2005/ DAY 13

18歳で祖国を離れた。
アメリカに、ただ漠然と、憧れていた。
雑誌やテレビや映画で見るアメリカは、すべてが輝いていた。

貧しくて汚い、第三世界の祖国から、一刻も早く抜け出したかった。
だからアメリカの大学を出て、アメリカの会社に就職した。
帰国するつもりなんて、毛頭なかった。

アメリカで暮らすことに、最早なんの疑いも覚えずに、過ごしてきた。
ところがここにきて、祖国、インドが気になりはじめた。
経済誌をにぎわす、中国と、インド。
インド人である自分に、今なにができるのか。
インド人であるということを武器に、なにかできやしないか。

そう思いはじめて1年余り。幾度かインド出張を重ねた。
訪れるたびに、過去からは想像もつかぬほど、変貌を遂げ続ける我が祖国。
このインドで、俺はなにができるだろう。
なにかを為せるに、違いない。

無数の人間が溢れかえるこの国を、俺の次なるステージに。

希望。焦燥。緊張。期待。
逸る気持ちを抑えながら、冷静にマーケットを分析する。
夕べ、レポートを書き上げ、アメリカのボスに送った。
今ここに在る、インドの発熱が、俺の熱意が、伝わっただろうか。

そんな今の俺に力をくれるのは、南インドの伝統的な朝食。
米粉で作られたパンケーキ、「ドサ」なのさ。
香ばしいドサを一口かじれば、おのずと力が湧いてくる。

食後は、ミルクたっぷりの、南インドのコーヒーで締めくくろう。

さあ、今日も一日、戦おうじゃないか。

*光線の具合で、夫が「苦みばしったいい男」に写ったため(と思うのはわたしだけか?)、キャラクターを変えてみた。口調でこんなにも変わる人間の印象。わたしの「日本語の用い方」で、こんなにも変わる夫の印象。もしも、こんなトーンを貫いていたら、「ハードボイルドな男」と思われていたんじゃないか。いや、思われんな。


↑カラフルな朝食とも、今日でお別れ。いよいよ旅の終着地、ニューデリー入りだ。

←つぼみだったユリも、数日のうちにすっかり開花した。

 

さまざまなペイストリ−類。結局、どれも口にしないままだった。

食べてもなかなか太らない体質だったら、もっとあれこれ試したのだけれど。

毎度おなじみ、南インドのコーヒーを、デコクション(Decoction)で注文。まずは抽出したコーヒーを注いでもらい……

濃厚なミルクを注いでもらう。風味豊かなコーヒーは、イタリアのカフェラテに勝るとも劣らぬおいいさ。

BACK NEXT