DAY05: 風に吹かれて。ごはんと味噌汁の毎朝。

APRIL 9, 2006

今朝は少し、風が強い。今日もまた、ホテルで過ごすことにした。

ところで、カウアイ島には、日系米国人(移民)が多い。無論、カウワイ島に限らず、他のハワイ諸島にも分散しているのだろうけれど。新聞で、街角の看板で、店名で、日本の名字をしばしば目にする。

ホテルで働いている人たちも、親近感を覚える顔だちの人たちが少なくない。

地元のレストランの料理でも、日本の断片は見られる。たとえば、大皿に、おかずとともに白飯がこんもりと盛られていたり。スーパーマーケットにあんぱんやメロンパンやいなりずしが普通に並んでいたり。

それらは、ニューヨークなど他都市に見られる流行としての日本食ではなく、長らくそこに、不可欠なものとして根付いて来たというどっしりとした存在感ある。

とはいえ、初めてホテルの朝食ブッフェを見た時には少し驚いた。日本人客はほとんど見られないにも関わらず、スクランブルエッグやソーセージ、パンケーキ、ベーコンなどに並んで、ほどよく炊かれた白飯がどーんと並んでいたのだ。

いったい、誰が朝から、この大量の白飯を食べるのだ? それはわたしだ。と思いつつ、わたしはそのおいしそうな白飯をボウルにつぎ、隣にあったポーチドエッグを載せ、それから味噌汁のコーナーでワカメと豆腐とネギをトッピングし、味噌汁を注ぎ入れ、独自朝食を創作した。

その様子を見ていた恰幅のいいブラックのお兄さんが、

「ヘイ、マム! それはなんなの?」

と興味深そうに声をかけてきたので、内容物を案内し、本当は正しい食べ方ではない旨も言い添えて、しかしおいしいのだ、と説明したところ、

「クール!」

と、感嘆してくれ、彼もとりあえず、味噌汁だけは茶わんについで持って入った。

わたしの味噌汁かけご飯は、当然、夫の目にとまるところとなり、

「ひとくちちょうだい!」「ん〜おいしい!」

とのことで、それから毎朝、我々の朝食は、フルーツに加え、味噌汁とごはんとなった。

さて、周囲を見回すと、そこここで、まるで当然のように、味噌汁をすする非日本人らがいる。

からからと、フォークで味噌汁茶わんをかき混ぜているお父さん。

白米とスクランブルエッグをあえて食べている少年。

「マミーはシーウィード(わかめ)が好きだよね!」

と言いながら、母に分けてやっている娘。

なんだか、へん?


朝はたっぷりのフルーツを。パパイヤにパイナップル。特にパイナップルがおいしい。

ものすごい、朝食。味噌汁を補填しながら、食べるのである。かなり、おいしいのである。

今日もまた、ポイプショッピングヴィレッジにあるRoy'sへ。日系米国人がシェフの有名チェーン店らしい。彼のクックブックも置いてある。昨日のモルテンチョコレートのレシピをみて愕然。1個のケーキに全卵2個、卵黄2個、砂糖バターチョコレート猛烈。やっぱりお菓子は、太るわけよね〜。こういうデザートはやっぱり週に一度にとどめるべきね。

これは前菜の盛り合わせ二人分。スペアリブのグリル、えびのグリル、上げ春巻き、マグロのタタキ、神戸ビーフ(ほんと?)の挽肉入り揚げ餃子。いずれも、おいしかった。ちなみに、カウアイ島では、質のよい料理を出す店が少ない。この店も、抜群の味ではないのだが、値段はかなり高かった。

夜の海辺を散歩する。夜の海辺はとてもよい。暗闇にぼうと浮かび上がる白波。浜辺に打ち付けるその音。

何もしゃべりたくなくなる。

梶井基次郎の、『Kの昇天』という短編を思い出す。高校2年の時、読書感想画を描いた。1年のときは、芥川龍之介の『地獄変』だった。

幾星霜重ねても、根源的に変わらない個性というものの所在について考える。

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