NEW YORK, NY
OCTOBER 14, 2006

冷たい風が吹いている。肩をすくめ歩く、半年ぶりのマンハッタン

バンガロール空港の国際線は、相変わらず、劣悪の環境だった。ルフトハンザ、エールフランス、ブリティッシュエアウェイズ、マレーシアンの出発便が重なりあう深夜は、大勢の乗客で込み合うにも関わらず、待合室には十分な座席がない。

ビジネスクラスのラウンジさえない。人々は、床に座り込んだりして、出発前から疲労している。

さて、我々の便は予定通りに発着し、フランクフルトには今朝到着。ビールこそ飲まなかったものの、やはりソーセージとザワークラウトを食べずにはいられない。お茶を飲みながら、ソーセージを食べる。

フランクフルトからニューヨークへの便もまた、予定通りに到着し、イミグレーションも問題なく通過した。

本当は他国を旅したいのにも関わらず、半年ごとに米国を訪れている第一の理由は「永住権の保持」とアルヴィンド(夫)の「市民権申請」のための条件を満たすためだ。半年に一度、米国の土を踏んだと言う記録が必要になるのである。

つまりは、米国であれば、どの都市を訪れるのでもよく、ハワイにしようか、という案も出ていたのだが、わたしがどうしても、自分の中に「ニューヨークの空気」を補填したく、ニューヨーク案を押したのだった。

飛行機のタラップを降りながら、吹き付けるひんやりとした風に五感が覚醒する思いだ。久しぶりに全身で受け止める、秋の風。四季のめりはりが浅いバンガロールでの暮らしで、眠ってしまっていた感性が蘇るようである。

タクシースタンドでイエローキャブに乗り込む。滑らかに走り出す。いつも渋滞でのろのろと走る車に慣れているせいか、そのスピードの速さに戸惑う。窓をあければ、乾いた木の葉の香りがする風が吹き込んで来る。懐かしい秋の匂い。晴れ晴れと、星条旗が風に揺れている。

青空が高く、小さな雲が、ぽかり、ぽかり、と浮かんでいる。道路標識が、視界の隅を瞬く間に流れ去る。

なにもかもを、ひとりでやっていたことを、思い出す。ひとりでやっていたことを、少し誇らしくさえも思う。

さて、今日から9泊10日のニューヨークライフ。今回はゆっくりと時間があるので、映画を見たり、ミュージアムを巡ったり、友人らと会ったりしながら、のんびりとした滞在を楽しもうかと思う。

アッパーウエストサイド、ブロードウェイと74丁目にあるHOTEL BEACON。キッチン 付きのスイートに部屋をとった。向かいにはFAIRWAYというスーパーマーケットがある。

夕方の界隈を散歩する。うるさいインドから比べると、ニューヨークさえ閑静。「静かだね」「人がいないね」「土曜なのにね」「静かだね」を何度も繰り返す、我々。

毎度おなじみ、我々が出会ったBARNES & NOBLEの界隈では、ファーマーズマーケットが開かれていた。秋の味覚、ブドウやリンゴ、洋ナシが並んでいる。

早めの夕食を取ろうとリンカーンセンターの向かいにあるROSA MEXICANOへ向かう。右端の高層ビルが、かつて住んでいたアパートメントビルディング。

ROSA MEXICANOでマルガリータを飲み、ワカモレとビーフのグリルを食べたかったのだが、土曜の夜とあって、まだ6時過ぎだというのに満席で、1時間半待ちとのこと。そんなに待つ気力はなく、仕方なく、いきつけだった近所のカジュアルなイタリアン、PUTTANESCAへ。

ここはずっとメニューが変わっていない。よく出前を頼んでいたころと同じだ。テーブルには、秋を知らせるパンプキン。シーザーサラダにカルパッチョ、キノコのフェトチーニ、サーモンのグリルを注文する。ワインを飲んだら時差ボケのせいか、二人とも急激に眠くなる。無口に食事をすませる。

夕食を終えて外に出る。あまりの風の冷たさに驚く。ニューヨークは寒すぎたり、暑すぎたり、めりはりが激しすぎて困る。革のジャケットを来て、ストールを首に巻いているのに、寒い。

さて、ホテルへ戻る前に、FAIRWAYでお買い物。明日の朝のために、オレンジジュースやヨーグルト、フルーツやパンなどを。バンガロールでは、スーパーマーケットへ買い物へ行くことなど皆無のアルヴィンド。「一年振りに買い物をするから、ちょっと、混乱する」とのこと。あまりの品数の多さに、選択肢の多さに、わたしも少し、くらくらする。

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