JUNE 21, 2005/ DAY
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         MONUMENT VALLEY
         (UTAH)- CANYON DE CHELLY NATIONAL MONUMENT (ARIZONA) 
         ナヴァホ・インディアンの聖なる蜘蛛の女神。そのシンボル、スパイダーロックへ
         
           
         
         モニュメント・ヴァレーのジープツアーを堪能し、ランチをすませた我々は、次の目的地を目指して車に乗り込む。時間を考えるとグランドキャニオンの観光拠点の一つであるサウスリムに直行すべきなのだろうが、夫が友人のマックスに勧められた"CANYON
         DE
         CHELLY(キャニオン・デ・シェイ)に寄りたいと言う。 
         
         キャニオン・デ・シェイは反対方向だが、そこを経由し、更にイーストリムを経てサウスリムを目指した場合、ホピ・インディアンの居住区を通過できる。アートのセンスに長けているといわれるホピ・インディアン。居住区内にはローカルな工芸品の店などもあるかもしれない。そういうところに立ち寄るのも楽しそうだ。 
         
         二人とも、グランドキャニオンに行ったことはないけれど、ツーリストも多そうだし、長居をする雰囲気でもないかもしれないと想像し、今夜はどこか途中の町で宿泊し、サウスリムには明日の午前中にでも到着すればいいだろう、ということになる。 
         
         モニュメント・ヴァレーを出て、ルート163を数十マイル南下、KAYENTAの町から地図にはなぜか出ていないルート59に移り、南東方向へひたすら走る。100マイルほど走ったところで、ルート191にぶつかるそこがCHINLEの町。キャニオン・デ・シェイの拠点だ。 
         
         キャニオン・デ・シェイは、NATIONAL
         PARK(国立公園)ではなく、NATIONAL
         MONUMENT(国定公園)ということもあってか、認知度もあまり高くないし、わたしは訪問にあまり乗り気ではなかった。更には空は曇りはじめて、今にも雨が降り出しそうだ。ともあれ、ヴィジターセンターで地図を貰いに行ったところ、キャニオン・デ・シェイには、他のキャニオン同様、見どころが何カ所もあり、一番眺めのいいところまでは更に20マイルほど走らなければならないという。 
         
         予想以上に時間がかかっての到着の上、さらにここで時間を費やすだけの見ごたえがあるのか、とも思ったが、せっかく来たのだからと再び車に乗り込み、キャニオン巡りを始めた。 
         
         いくつもの見どころに立ち寄っていると遅くなるので、ともかくは一番眺めがいいという最果てのSPIDER
         ROCK(スパイダーロック)を目指す。 
         
         そこは、観光客がちらほらと見られるばかりの、静かな場所だった。渓谷のただ中に、そびえ立つ二本の美しい岩。これはナヴァホ・インディアンたちから「スパイダーロック(蜘蛛の岩)」として崇められている岩だ。織物を大切な生業のひとつとする彼らには、「雌の蜘蛛が人々に織物を教えてくれた」という古くからの神話がある。 
         
         彼らが崇拝する神々の中のひとつに、雌の蜘蛛の女神があり、この岩はその象徴とされ、「スパイダーロック」と呼ばれているのだという。 
         
         空には数羽のイーグルが舞い飛ぶ。深い渓谷から天を射るようにのびるスパイダーロック。そのたもとには、驚いたことに、インディアンたちの住まいや農地らしき様子が見える。遥か眼下に、彼らの家を眺めながら、まるで異次元から異次元をのぞき見ているような気がする。 
         
         空は曇ったまま、しかしまだ雨は降らない。静寂の中に風の音だけが聞こえる。清らかな場所だ。来てよかった。 
         
         帰路、もう一つのポイント、WHITE
         HOUSE(ホワイトハウス)に立ち寄る。その展望台からは、対岸の峡谷の壁の下部に、小さな白っぽい建物のあとが見える。これは、ナヴァホより以前、古代プエブロの人々(アナサジ・インディアン)によって建造されたものだという。このポイントからは、ホワイトハウスまでのトレイルがあった。もしも時間があれば歩いて近寄ってみたかったと思う。 
         
         それにしても、名が知られていない、しかしこんな魅力的なところがあるということに、驚く。この国は本当に広い。まだまだ行きたいところがたくさん出てきそうで尽きない。
         
          
         
          
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